説教 12月2日 「人の子が来る、身をもたげよ」

聖書 ルカによる福音書21章20節〜35節

今日から12月25日のクリスマスまでの約四週間の間、アドベントという教会暦上の時期に入ります。アドベントとは、ラテン語で「到着」とか「接近」という意味で、「主が来られる」「すでに来ておられる」ということを意味します。私たちはこの時期、二千年前主が来られた日を記念するクリスマスを準備しながら、私たち神に背く者を天地が造られるより前から愛し、ついにご自身の御子を送って下さった神の愛の深さ大きさを覚え、感謝と悔い改めの思いをもって過ごすのです。しかし、アドベントにはもう一つの意味があります。それはあの時来られ、人類の罪を引き受けて死んで甦って、私たちの罪を取り除き、私たちをご自身の復活の命にあずからせ神の子として下さった御子主イエスが再び来て下さる時を私たちが待ち望んでいることを覚えるという意味です。その時すべての人が神を仰ぎ愛し、また互いに愛し合い、神の栄光を受けて共に輝いて生きる世界が始まる、その時が来るのを教会は待ち望んでいるのです。
今日のテキストは、主イエスが地上を去って天に昇られた後、主によって聖霊を注がれて集められ主を証しする教会が直面する多くの試練について主ご自身があらかじめ語られ、勧めがなされている箇所です。そこには、この罪の世がその空しさのままに狂暴になる有様が語られています。それは主の教会の群れが、実際に直面したこと,あるいは現に直面していることでありました。そしてそのただ中で、主の群れは、試練の中で天よりの主の御声を聞き、福音書記者はその言葉を、地上にあった主イエスがすでにその後のことをご存じで語られたものとして記したものだと考えられます。主イエスが去った後、暴政を敷く総督が次々と送られ、それに対して、ガリラヤ地方などで、「我こそキリスト」と名乗り人々を糾合してローマに対する反乱に立ち上がる人々が起こりました。しかし、主イエスは、天から彼らに寄り添い「それについて行ってはならない」と諭され、また、それに対してローマ帝国が軍隊をよこしてきて、戦争が始まるときも、戦争にかかわりを持つな、怯えるな、と諭され、ひたすら、再び来られる主を仰ぎ、主に望みを置いて忍び耐え、落ち着いて生活をし、敵を許し愛された主に導かれて、愛の業に励むように、天から歩み寄って語って下さったのでしょう。ローマ人に対する敵意に燃えた過激な人々が、このようなキリスト者たちを迫害したり、ローマ帝国の総督に尋問され投獄されることもありました。そういうときも、主はあなたが語るべきことは私があなたの口に入れてあげるので、安心して堂々としていなさい、「あなたから髪の毛一本も失われない」と語られました。そして、エルサレム滅亡の時は、山に逃げよ、神の御許に身を寄せて祈って主を待ちなさい、と言われたのです。

2018年12月29日