説教 7月15日「寂しい人々がみんなで満腹する」

聖書 マタイによる福音書14章13〜21節

7月15 日に行った礼拝の説教の一部を紹介します。聖書個所はマタイによる福音書14章13〜21節で、題は「寂しい人々がみんなで満腹する」です。
主イエスに先立って登場し「神の国」を伝え、悪しき世に対する裁きを告げて、多くの貧しい民衆に慕われていた洗礼者ヨハネが、ヘロデによって斬殺されたというニュースが主イエスに届きました。主は、悲しみ一人祈るために荒れ野に逃れようとしましたが、ヨハネの死の衝撃をうけていよいよ悲嘆にくれる民衆がすがるようにイエスを追って荒れ野でイエスを取り巻いてしまいました。主イエスは、その民衆を深く憐れまれました。はらわたがちぎれるほど彼らのよるべなさに痛みを覚えられたのでした。主は、群衆たちと語らい、病人たちを癒されて、時を過ごすうちに、日暮れ時になり、弟子たちも主イエスのところに到着します。弟子たちは、もう遅いので、群衆たちを解散させ、めいめい食物を買いに行かせて下さいと主に頼みますが、主は言われます。「彼らが行く必要はない、あなた方の手で食物をやりなさい。」弟子たちは言います。「私たちはここにパン五つと魚二匹しか持っていません。無理です。」しかし主は言われます。「じゃ、それを持ってきなさい。そして、主イエスは群衆に命じて草の上に座らせ、五つのパンと二匹の魚を手に取って、天を仰いで祝福し、パンを割いて弟子たちに渡された、弟子たちはそれを群衆に分け与えた、そしてみんな者が満腹したといいます。そこには男だけで5000人いたということです。
たぶん歴史的事実ではないでしょう。しかし、そのもとには、主イエスが貧しい群衆の只中で起こされた驚くべき神の恵みの出来事があって、その只中にあって自分の身に受けたその恵みの出来事を、神の恵みへの歓びと感動をもって伝えた人々がいて、伝えられた人々がさらに、これを驚くべき神の出来事として他の人々に伝え、こうして人から人へと神の恵みの満ち満ちた奇跡として伝えられていくうちに、そのすごさが強調されてついに、最初の福音書記者マルコに伝わった時には、パン五つと魚二匹で、男だけでも 5000人が満腹したという話になったのではないかと思われます。
しかし大切なことは、この重荷を負う、寄る辺ない思いでいた人々の苦しみを主ははらわたの痛みとされ、その人々と食べ物を分かち合いそこにあふれる神の国の恵みの豊かさを現わされたということです。そして、そのために、弟子たちに「あなたたちの手で食物を与えなさい」と言われ彼らを用いられたことです。私たち教会の群れも、現代日本の状況の只中に遣わされて、同じように命じられているのではないでしょうか。富と権力を持つ者の横暴のゆえに、社会の最底辺で病み疲れ生活を脅かされ孤立する人々に、主イエスによる神の恵みを伝えていくように私たちも遣わされています。

2018年07月31日