説教 3月20日 「闇の世の強者は縛り上げられた、神の国だ」

聖書 マルコによる福音書3章20~30節

 

神の御子、主イエスが来られて、神ご自身によって神に背く人類の歴史そのものが終りとされ、新しい神の恵みの満ち満ちる世界への道が切り開かれました。イエスご自身が、ユダヤのガリラヤという辺境の地方に暮らす貧しい零細な人々、その多くの人々が病気や障害を負い、貶められている人々の間で、そのことを現わしてこう語りました。「神の国(=神の王としての支配)は近づいた。悔い改めて(=思いを新たにして)、福音を信ぜよ」と。主イエスは、こう語られただけでなく、多くの病人を癒し、肢の萎えた人を立たせ、盲人が見え、聾唖者が聞きモノを言えるようにし、悪霊に人間性を狂わされた人々から悪霊を追い出されました。それらはすべて癒しであると共に神の国の到来を証しするものでありました。イエスのところには、いつも大勢の様々な苦しみを負う極貧の群衆がひしめいて、この日も、群衆も主イエス自身も食事すらとる暇がないほどでした。そのあり様は、神に背を向け自分を高みにおいて権力をもって人々を支配している人々には、彼らの支配秩序を揺るがす動きであり、ぜひとも取り除かれるべきものでした。この世の現状に浸かりきっている一般世間にもそう思われました。主イエスの身内の者さえ、主が狂っていると思って取り押さえに来たということです。当時ユダヤの社会を支配していた律法学者たちは、悪霊を追い出して人間を取り戻す主の癒しの行為をさして「あれは悪霊の頭ベルゼブルによって悪霊を追い出しているのだ」と言いふらしていました。主イエスは、彼らを呼びつけて反論しました。「どうしてサタンがサタンを追い出せようか。サタンがうちわで争えば、滅びてしまうではないか」いずれにせよ、悪霊の国は神ご自身の力、聖霊によって滅んでいる。盗賊が家を襲うときだって、まず強い人を縛り上げて、家財道具を奪い取るものだ。見よ、今や父なる神の力なる聖霊が働き、神に逆らって人間から人間性を奪う悪霊の働きを抑え、その最も強いものを縛り上げている、と。この世がどんなに、神に逆らって自分の力におごり高ぶる「強い者」たちが支配し猛威をふるう世界のようであっても、実はもう、その「強い者」の基づく根っこは虚無にすぎず、その者は神の善き霊の支配のもとに縛り上げられている!神の名を汚すことも、まして私を汚すことも、許されていい、しかし、あなたに及んでいる神の善き力の働きである聖霊を、悪霊の手下だと貶めることは、あなた自身を汚すこと、貶めること、だから、許されないことなのだ、と。

2022年04月03日